日垣隆『世間のウソ』(新潮新書)

世間のウソ (新潮新書)

今年1月に出た本。
まえがきによれば、ウソには五種類あるそうだ。で、本書はこのうち、もっとも広範に被害が及ぶものである「世間を誤らせる構造的なウソ」を取り扱うとして、大きく分けて「リスク」「事件」「子ども」「値段」「制度」といった五つのカテゴリー、計15話の「ウソ」が取り上げられている。


それにしても、著者のあい変わらずの広範な守備範囲=膨大な取材量には驚くばかり。
冒頭の、「ジャンボ宝くじ」で一等が当たる確率よりも、宝くじを買った帰りに車にひかれる確率のほうがはるかに高い、という指摘には思わずうなずく。今度、ウチの親父にも言ってやろう思う。

また、家庭内のもめ事に警察が立ち入れないことの理由としてよく言われる「民事不介入」は、根拠となる法律が存在していないとは驚いた。てっきり、その通りかと思っていたし。

他にも、昨今のニュースを例としながら、報道機関や国の制度や官僚の対応のいいかげんさが、分かりやすく指摘されている。大事だと思うのは、そういった「あやまり」を指摘するだけでなく、同時に簡潔で実現性のある「改善策」を提示していることだろう。

この本、新書でもあるこどだし、今で言うところの「メディアリテラシー」の好テキストとして分類され、活用されてもらいたい。