高田明典『知った気でいるあなたのための 構造主義方法論入門』(夏目書房)

知った気でいるあなたのための構造主義方法論入門

先日読んだ同じ著者による『知った気でいるあなたのための ポストモダン再入門』に先行して出版されていた本。1997年に出されているから、『ポストモダン再入門』よりも8年前になる。(気の長いシリーズ?ではある)

この本、じつは以前から図書館で見かけてはいたのだけど、その装丁の感じから「いまひとつ」(失礼)のような気がして、手に取らなかった(のだと思う)。たぶん、『ポストモダン再入門』を読まなかったら、本書は読んでいなかっただろう。両方の著作とも、わりと高度な内容と平易な記述とが両立できている点で、有益な本であると思うだけに、「見かけ」で損をしている?のは、ちょっと残念。(「いまひとつ」の装丁だと思うのは、私だけかもしれないけど)


さてこの本、題名にもあるように、単なる構造主義の「入門書」ではなくて、構造主義の「方法論」の入門書である。(たしか『ポストモダン再入門』でも言っていたな)いちおう、構造主義とはどういうものなのか、というところから始めて、ソシュールレヴィ=ストロースらを取りあげる歴史的展開についても説明されている。でも、最初に手に取る構造主義の本には向いていないような気がした。たとえば『はじめての構造主義 (講談社現代新書)』などを読んでからの方が、すんなり入れるように思う。


本書は全体が8章から成るが、大まかな構成としては、

  • 1−3章:構造主義の入門編(歴史的展開、構造とは?)
  • 4−6章:真理と外部世界の実在に関して
  • 7章:構造主義の手法
  • 8章:構造主義への疑問や反論

と整理できると思われる。

で、題名からすると、7章の「手法」のところが主眼なように思ったのだけど、このあたりにくると、著者の書きぶりがちょっと失速ぎみな印象を受けた。それは見方を変えれば、構造主義の手法を分かりやすく説くことの難しさかもしれない。たぶん、その「難しさ」が、著者をして「まともな入門書がなかった」ことの理由でもあるのだろうけど。

それよりも、4−6章で展開されている議論などが、「正しく」世に広まることのほうが大事なのではないだろうか。
たぶん、構造主義のキモであるにも関わらずフツーの人に理解されにくい(であろう)ことは、「客観的真理の実在を退ける」ということではないだろうか。この点、以前に読んだ池田清彦の『構造主義科学論の冒険 (講談社学術文庫)』でもひっかかりを覚えたのだが、この本での説明の方が、説得的だと感じられた。この点で、「ノイズ君」というツッコミを入れる役回りが出てきて議論を進めていく記述のしかたは、成功しているように思う。


附録に、本書の中で十分に説明できなかった事柄について、いくつか補足してあるのだが、これも面白そう。(「醜い家鴨の子の定理」とか、「議論の構造分析」など)それらは、これから読んでみるつもり。