ジェフリー・ディーヴァー『ボーン・コレクター(上・下)』(文春文庫)

ボーン・コレクター 上 (文春文庫)

ここ数年の翻訳ミステリにおける年末回顧の類で、必ず挙げられてきたのが、このJ.ディーヴァーによる一連の「リンカーン・ライム」もの。本書はその第一作で、訳書の刊行は1999年だが、文庫になったこともあって(ハードカバーは重そうだし)、遅ればせながら読んでみた。

このシリーズについては、あちこちで「ジェットコースター・サスペンスの王道を往く傑作」(文庫-下のカバー解説)といったような賛辞を目にしたが、読み終えてみると、たしかに誇大宣伝ではない内容である。

ちなみにamazonのレビューをみると、すでに19件で、ほとんどが高い評価。


読みはじめると、スピード感と畳みかけるようなストーリー展開にページをめくる手が止まらない。
が、それ以上に、元ニューヨーク市警の科学捜査部長で、捜査中の事故によって四肢麻痺となった主人公リンカーン・ライムのキャラクターが、強烈な印象を残す。ガスクロマトグラフ質量分析、摩擦稜線など、科学捜査の専門用語がこれでもかと出てくるうえ、ニューヨーク中の歴史・地理、はては工業製品の履歴までを駆使して犯人を追いつめていく、ライムの博識と頭脳の高速回転がきわだっている。
また警ら官(?)にも関わらず、ライムの手足となって犯行現場での鑑識や被害者の救出場面で活躍するサックス巡査。そして、このふたりの個性が、「ジェットコースター・サスペンス」に人間的な陰影と厚みを与えてもいて、途中で目(と手)を離せない。

第二作以降を読むのが楽しみだ。