笹生陽子『ぼくは悪党になりたい』(角川書店)

ぼくは悪党になりたい

42歳の未婚の母親と、その息子二人という、ちょっと変わった一家で起こる、ちょっと変則な物語。高校生である長男の青春小説?としても、面白く読めた。


母親が仕事で海外へ買い付けに出た矢先、一家を預かる長男が修学旅行に行く前日に、弟が水ぼうそうにかかる。誰か助っ人を呼ばないとならない、というので、長男が一家にある「緊急用」の住所録からとある男性を選ぶ。この男性、よく世話をしてくれるのだが、もしかして...、というのが話のはじまり。


いまどきの高校生の日常なんて、全く想像もつかないが、同級生の人物造形も(ちょっと古風で純情だと思うが)わりと魅力的で、会話もスムース。
ただ、この題名は、いただけない。
もう少し、気の利いたものにした方がいいのではないでしょうかね。
それと、この本では、海外に行っていることもあって母親がほとんど出てこない。それが、長男の行動の自由を確保してもいるのだろうけど、この一家を語るのには、未婚の母親を避けては通れまい。
次回は(もし、あるのなら)、母親が主人公となる話しが読みたい。