三宅伸吾『知財戦争』(新潮新書)

知財戦争 (新潮新書)
青色発光ダイオードの特許をめぐる裁判で、発明した原告の中村修二教授に対して、「発明の対価は200億円」という判決が出されたことは記憶に新しい。企業と技術者との関係も、かなり話題になった。(結局、弁護士の勧める「和解」に応じて、8億何千万円かで決着したとはいえ)


本書は、特許権著作権などの「知的財産」をとりまく現状を、政・財・官それぞれの角度から、海外での動向も踏まえてレポートし、日本での法整備や行政の立ち後れを指摘する、といった内容。


この「知的財産」は、日本国内だけで対応できる問題ではなく、つねに諸外国の動向ともリンクした対応に迫られる分野であろう。また、新しい分野だけに、国会議員を含めて推進側のギクシャクとした様子なども詳しく描かれている。
逆に言えば、「知的財産」をとりまく「環境整備」を進めていくこと自体にも、ビジネスのチャンスがあるのかもしれない。


ただ、グローバリゼーションに対応するためとはいえ、さまざまな施策を講じる中で見過ごされている問題はないのだろうか。
例えば、100年以上前に制定された現行の著作権が、もはや時代遅れの面も多々あるのは事実だろう。だが、著作権期間の延長やレコード輸入制限権などの法整備と、「知的財産」を推進することと兼ね合いをどう考慮するのか。技術や情報の普及といった事と、自国の利益とのバランスなどを、どう考えるのか。そういったあたりも、書いてほしかった気がした。