上野千鶴子『老いる準備』(学陽書房)

老いる準備―介護することされること

著者自身がいうには、50歳という「ピーク」を超えて見えてきた「新しい景色のレポート」だとか。学会での講演や専門の雑誌に載った文章を集めたものらしいが、とても読みやすい。

扱われるのは、介護と家族の問題(第2章)、介護保険の社会的インパクトの大きさとその影響(第3章)、介護における市民事業の可能性(第4章)、などなど。とりわけ介護保険について、これまでは性急に決められた感じを持っていたけど、「介護の社会化」だけに止まらない導入の意味など、行政の位置づけの変化も交えての解説は分かりやすかった。

また、老人介護においてあまり語られない(表に出てこない)家族の問題などは、実際問題として親の介護をどうするかが迫りつつある世代として、非常に興味深かった。
たとえば「介護離婚」(夫の親の介護を「押しつけられた」と感じた妻が、それをきっかけに離婚すること、なのだそうだ)といった現実も紹介されている。


私自身は「50歳の峠」にはまだ距離があるけれど、介護保険料を支払い始める年代であるなら、収穫のある本だと思う。