石田衣良『4TEEN』(新潮社)

4TEEN
2003年上半期の直木賞を受賞した作品。
この人の本といえば、個人的にはまず『池袋ウエストゲートパーク』のシリーズを思い浮かべる。(1作目が刊行された当時、確か「本の雑誌」で、評論家の池上冬樹がハードボイルド小説として評価していたのを記憶している)


本書は、『池袋...』にでてくる青年たちよりもさらに年下、題名にもあるとおり、4人の男子中学生が主人公の短編集。
全部で8編。将来の不安感や性への興味といった、中学生が頭を悩ませる普遍的?なことから、不登校や拒食、テレクラや新宿の風俗など、今どきのネタも盛り込んで、どの短編も読ませる。また、主人公たちの住む場所が、再開発が進んで高層マンションが並びたつ部分と昔からの住宅地が共存する月島界隈であるのも、これらの物語にリアルさを加えている。

でも、読んでいると、「できすぎた」話しのような感じられてくる。
我が中学時代をふり返ると、(入学試験がないぶん?)高校や大学と違い、クラスメートの出身階層のバリエーションが大きい時期だったと思う。
しかし、現在でもそのままなんだろうか、とくに東京都心付近で。
お金に余裕のある層の子供は、この時点で私立中学に行ってたりしないのか。また、中学2年生が主人公のわりに、塾などの描写がないことも、「違和感」の要因かもしれない。
比較することはないのだけど、どうしても重松清が描く小中学生と比べてしまう。

面白く読めるけど、成人した男性が想像して描く「いまの中学生の日常」という印象が、どうもつきまとってしまうのだが。