森永卓郎『「家計破綻」に負けない経済学』(講談社現代新書)

「家計破綻」に負けない経済学 (講談社現代新書)

著者はTVでも見かける、人気のエコノミスト
「売れっ子エコノミスト」の中では、小泉首相のとなえる「構造改革」に対し、ごく一部の金持ちを優遇する弱肉強食の改革だと批判している点で、わりと貴重な方ではないだろうか。
(他にもいるのかも知れないけど、旺盛な批判的言動をしている、という点で)


そうした著者の最新刊。
全体は4章に分かれ、前半は現在の経済状況の特徴とその分析、後半は家計破綻に備える具体的な指南、といった内容。
整理されてはいるものの、話題があちこち飛んで羅列的なところがある。「おわりに」によれば、各所での連載を再編集したとあるので、そのためか。
なので、体系的な主張や考察、といった面では物足りないが、その一方で、

など、「マスコミで話題となったけど、その要因までは(フツーの人は)なかなか突き詰めきれない問題」について、著者による説明の切れ味は明快である。
それから、「デフレは近いうちに収束し、インフレに誘導されるのは遠くない」そうである。そうした情勢判断のもとに、この本は書かれている。


全体として、現在の政治動向に対し、もう少し「大きく」対抗するすべはないのか、といった物足りなさは残る。
でも著者の言うように、「家計破綻を回避する防衛・運用術」(第3章)を身につけ、「定年後を見据えた人生の再設計」(第4章)を念頭におくことは、(著者が予想する)経済情勢の急変に備えて、私たち一般庶民が個人としてなすべき対策として、大事な視点ではあるだろう。