サッチャー時代のイギリス―その政治、経済、教育 (岩波新書)作者: 森嶋通夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1988/12/20メディア: 新書 クリック: 13回この商品を含むブログ (9件) を見る

今回の総選挙の結果と照らしあわせながら読むと、17年前に出た本ではあるけど、いろいろと興味深い。
「官から民へ」という改革、自身の属する政党内からの反発、小選挙区という制度をフルに活用して選挙に勝利した点などなど、当時のサッチャー政権がいまの小泉さんの姿と重なる面が多いことがよく分かる。もちろんイギリスと日本では制度も歴史も異なるので、そういう点をふまえないといけないが。

この本ではサッチャー政権の行う改革の背景について、「新自由主義」という言葉は使われておらず(当時はまだ無かったのか?)、「シュンペーター反革命」という説明がなされる。つまり、時間軸を逆に進めているかのような改革だということ。「ビクトリア時代に帰れ」というのは、サッチャーさんが使ったフレーズとして記憶にあるけど、昔のほうが企業も活力にあふれていたというのが、その背景にあったらしい。
サッチャーさんというと、新自由主義的な改革を始めた人、という単純な思いこみがあった。だけどこの本を読むと、どうして彼女が改革をしようという考えに至ったのか、「新自由主義」という言葉だけではつかみ損ねている側面があるようだ。


本書では後半で、制度の改革に関連して、何事も徹底して行うのはよくない、といった趣旨の文章が出てくる。この著者については、先頃亡くなった著名な経済学者、というくらいの知識しかないけど、この本を読んでいると、著者の誠実な人柄がにじみ出てくるような印象を強く受けた。