恩田陸『夜のピクニック』(新潮社)

夜のピクニック

今年の「本屋大賞」の受賞作ということで、わりとメディアに取り上げられている作品。
昨年に受賞した小川洋子も、この賞をもらったことで、よりメジャーになったような気がするけど、恩田陸にとっても、同じような感じになるのだろうか。

amazonで検索してみると、レビューの平均が4.5ときわめて高い評価。さすが「本屋大賞」だ。スタバでも一気に読んだ。
大枠のストーリーは、「とある地方の高校における恒例行事「歩行祭」における一日を描く、青春小説」といったところか。でも、「歩行祭」はいわば舞台装置にすぎなくて、そこに参加している3年生の生徒それぞれが、「今年が最後の歩行祭」という共通の思いとともに、各自のそれぞれの「思い」も秘めながら参加しているのがミソ。同じクラスの貴子と融を中心に、いろんな人物が入れ替わり立ち替わり物語に登場してきて、「歩行祭」の最後まで、展開に目を離せない。

ただ、進学校ということもあってか、出てくる生徒はみな行儀がいいというか、そつがない。言ってみれば、「はじけている生徒」は出てこない。いまどきの高校生って、こんな感じなのかどうか知らないが、現役の高校生やそれに近い人よりも、「かつて」高校生だった人の方が、読んでいて感情移入しやすいのではないだろうか。

それと、恩田陸という人は、わりと意地悪な人だなと思ったのは、最後の終わり方だ。
ラストでは、アメリカに引っ越したクラスメートの弟に視点が変わっていて、この弟の目から見た「歩行祭」とそのゴール・シーンが描かれる。そこでは固有名詞は無くなっていて、ゴールしていく「彼」や「彼女」とその人数だけが描かれる。最後の最後で、「歩行祭」の内部から一気に引いた視点で、それもシニカルな視線で「歩行祭」を観察しながら終わっているのである。それも、言ってみれば「アメリカ人」の視線で。
このラストから振り返ると、貴子と融の関係も、また登場してきたクラスメートたちの将来も、それほど希望に満ちているとは言えないような気がしてきてしまうのだが。

さらに、タイトルが「夜のピクニック」になっているのも、その「シニカルな視線」ゆえなのかも。


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