吉田修一『春、バーニーズで』(文藝春秋)

春、バーニーズで(画像が出ないので、こちらをリンク)

昨年の11月に出ていた本。
黒いカバーに銀文字のタイトルという装丁に上品な感じを受けたけど、相方によると、バーニーズの袋が、まさしくそうなんだそうだ。知らなかった。
思い起こせば、この本の宣伝で、「小説を、贈る」といったコピーがあったのは、そういう意味だったのかと、今さらながら納得。(遅い)


で、この本、「文学界」に連載していた4本の連作短編と、別の1本の短編とを併せて1冊にしたもの。こう書くと、なんだか強引に本にまとめたようだけど(そういう側面が無いとは言えない?)、最後の短編までまとめて読むと、なんだが不思議なまとまり感がある。

連作のほうは、かつてオカマと同棲していた男性を主人公にして、子連れの女性と結婚して郊外に暮らすさまを描いている。(たしかこの男性は、初期の作品の登場人物だったはず)

やっぱりうまいよな、吉田修一
これといった展開はないのだけど、日々の暮らしに張り付いている男の鬱屈?、みたいなものが行間から感じられるような気がした。4つめの短編「パーキングエリア」のラストは、ちょっとできすぎだけど。