森博嗣『ダウン・ツ・ヘブン』(中央公論新社)

ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven
久しぶりの森博嗣
パイロット(ジェットではなくプロペラ機)であるクサナギが主人公のシリーズ3作目。装丁は凝っていて、本屋でも思わず目に止まる。
過去や未来といった時代設定や場所など、小説の背景があいまいにされたままなのだけど、それゆえに、クサナギの心理状態やクサナギと周りの人物との関係(だけ)が浮き上がって描かれていく、という仕掛け?か。
前2作はなかなか楽しめたのだが、本書では、冒頭の戦闘でクサナギが負傷する場面からラストまでを引っ張りすぎている感が残った。クサナギの内面描写にも、いまひとつ冴えが無かったような。
次作以降の新機軸に期待。

サイエンス・ウォーカー

またもや森山さんの日記から。

▼コンビニで「サイエンス・ウォーカー」が折り込まれた「東京ウォーカー」を購入。めっちゃ普通。ただの折り込み広告です。
▼よそでも書いたのだけど、これに投じられた7000万円は、コンテンツ(チラシ)製作代というよりは、角川書店の持つ流通ルートに載せてもらうための金額でしょう。つまり「科学技術週間」告知チラシ110万部を撒くための経費が7000万円かかった、と見るのが普通だと思います。

http://moriyama.com/diary/2006/diary.htm#diary.06.03.28

「サイエンス・ウォーカー」とは何か? と見てみると、
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20060325k0000m040081000c.html
おっと、けっこうな「チラシ」ではないですか、これは。
見てみたい。
なお「サイエンス・ウォーカー」は単品でも駅やコンビニなどで無料配布するらしい。見たいです。

「惑星ソラリス」原作者 スタニスワフ・レムさん死去

http://www.asahi.com/obituaries/update/0328/001.html
森山さんの日記「K. moriyama's diary」で知った。享年84歳。もっとも有名なSF作家、と紹介されていたが、私が読んだのは国書刊行会から出た新訳の『ソラリス』のみ。それでも、この人の「すごさ」の片鱗くらいには触れたような気がした。

坂木司『青空の卵』(東京創元社)

青空の卵 (CRIME CLUB)
例によって、北上次郎氏による書評を(どこだかの雑誌で)読んで興味が湧いたので、読んでみた。
自宅でプログラマーをしている引きこもりの鳥井と、外資系の保険会社に勤める坂木の二人が遭遇する、ちょっと変わった人たちとの交流と謎(出来事)が交錯する連作短編集。探偵役の鳥井と語り手である坂木という、ミステリーとしては常道の配役なのだけど、二人の関係が普通ではない。
詳しくは書かないけれど、読みすすめていく中で、徐々に明らかに二人の関係は、いい年をした若い男性どうしのつき合い方としては、引いてしまう人もいるかもしれない。けれども、謎解きとも絡みながら、自覚的相互依存?とも言えるような二人の関係性が描かれる部分は、不思議と読ませる。一種の「内省的社会派ミステリ」とも言えるかもしれない。こうした雰囲気は、東京創元社のミステリのよき伝統かな?
シリーズのようなので、続きも読んでみるつもり。

村上春樹氏:チェコの「フランツ・カフカ賞」を受賞(MSN毎日インタラクティブ、から)

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/gakugei/news/20060323k0000e040053000c.html

...
同賞は01年に創設、今年が6回目。これまで04年にオーストリアの女性作家エルフリーデ・イェリネク氏、05年には英国の劇作家ハロルド・ピンター氏が受賞。両氏はいずれもその年にノーベル文学賞を受賞した。(共同)

とのこと。
世界のムラカミハルキは、いよいよノーベル賞まで射程に入った?

予約制本屋さん 人気(YOMIURI ONLINE/読売新聞、より)

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20060316bk0b.htm

...横浜市で昨年8月にオープンした「エンカウンター」は、ちょっと変わった書店だ。
同店で本を手に取るためには、来店を予約し、入場料を払う必要がある。書店に1時間いるなら500円、2時間なら800円、3時間は1000円だ。
約2500冊の本は様々な分野の古書が中心だ。多くは中が見えない紙袋に入っている。その袋を開いて読んだ人は、購入しない場合、次にその本を手に取る人のために感想などのメッセージを書いて、棚に戻すことをルールにしている。
(中略)
客には紅茶が出され、ゆったりとした空間と時間の中で本の品定めができる。

新しい試みではあるだろうけど、これって最近見かけるようになった、古本屋が喫茶店などを借りてやる「ブックカフェ」のバリエーションということではないか。
ただ個人的には、棚にずらっと並んだ本の背表紙を眺める、という行為も、(古)本屋での醍醐味のひとつだと思っている。なので、「中が見えない紙袋」に本が入っているというのは、それだけを聞くと、「ちょっとどうも」と感じてしまうのだが。